センスが芽生えるTOKYOの最新花屋。
- 2018年4月13日
- 読了時間: 7分
花を贈る機会が増える春、大切な人にはフローリストの世界観が光るブーケで笑顔を届けよう。ここ1、2年以内に東京に店を構えた花屋は、自由な感性と譲れないこだわりが詰まっている。話題の店から隠れ屋的店まで最新4軒を、あなたの通いたいリストに追加して。
VOICE 止まない探究心から生まれる確かな審美眼。

喧騒を忘れるような静寂な店内で五感を研ぎ澄ませながら吟味して。
こえを聴き、こえを届けるーー。お客様の要望や生産者の考えに耳を傾け送り手へ、といった思いから名付けられた花屋「VOICE」は、2017年1月23日にオープン。オーナーの香内斉さんは、中目黒の花屋で4年ほど修行し、独立することに。「生きた花は環境によって咲き方が変わるから、適切な条件を知ることは欠かせない」というように、定期的に自らの足で農家を訪れ、生産者の話を直接聞くなど、日々知恵を深める努力を惜しまない。
奥のショウケース内にはさまざまなガラス瓶が並び、主役級の大輪の花から素朴で可憐な花まで鮮やかな色を放っている。テーブルがあるスペースでは、ワークショップや打ち合わせを行ったり、展示会場として貸し出すこともあり、その場でお花をしつらえることも多いのだとか。店頭販売の他、ウエディングやイベントの装花など多方面で活躍している。
お店にふらっと入ってきた人はいないほど人目につかない店構え。だが、客の期待を超える仕上がりは、確かな信頼へと繋がり、リピーターや口コミで訪れる人の後がたえない。また、男性客も依頼しやすい可愛すぎないテイストも「VOICE」の得意分野。オープンしてからわずか1年だが、香内さんの花に対する真っ直ぐ深い思いは徐々に広まりつつある。

客に見える部分すべてはこだわっている。作家の器や出張で偶然見つけたフラワーベースを使用。
無駄を切り落とした高尚な組み合わせ。

30、40代のファッション感度の高い女性に贈るイメージをして作られたブーケ。大きくて白いユリと祝儀にふさわしいオレンジと赤紫のチューリップだけのダイナミックな組み合わせは、気品溢れるオーラを放っている。受け取る方は自然と背筋が伸びそうだ。
VOICE(ボイス) 東京都渋谷区神宮前3-7-11 JINGUMAE HOUSE 1F Tel./03-6883-4227 営業時間/13:00〜19:00 不定休 http://voice-flower.jp
音空花店 ロックに映画。好きなものが詰まった花の宝箱。

美術デザイナーの仲間と作り上げた店内。お店のロゴは前職のノウハウを活かして、川瀬さん自らが制作。
懐かしい趣きの建具の中から溢れんばかりに存在感を放つ花々。扉を開けると心地よいロックミュージックが響き、非日常な空間に包まれる。「音空花店」は、音楽と映画をこよなく愛するオーナー、川瀬涼子さんによって今年2月1日に幕を開けた。前職の映像美術の仕事を経て、もともと部屋に欠かしたことがないほど花が好きだったことから、念願のお店を持つことに。
店内には独特な咲き方をするネイティブフラワーや対照的な花びらの質感が柔らかい花など、バラエティ豊富に揃っている。「美しいものを求める上で、決まったルールはない。常識や概念にとらわれず、自分の直感に従うことを日々心がけている」と川瀬さん。その時にしかない色合いや質感が出てくることから、お客様に了承を得てドライフラワーや萎れかけの花をブーケに入れることもあるなど、自由な発想を取り入れている。
常識を覆すことを恐れない姿勢は、ロックなマインドと映像美術で培った確かな美的感覚から。花はもちろん、音楽の他に映画のヴィンテージポスターやCDディスクなど、好きな品が詰まった空間には穏やかな時間が流れている。

静けさの中でマーシャルのスピーカーから流れるロックミュージックがなんとも心地いい。
心揺さぶる真っ直ぐで儚い男心をブーケで表現。

「10代の男の子にはもっとお花を大切な人に贈って貰いたい」と話す川瀬さんが、映画『恋しくて』(1987)のように冴えない男の子が学校のマドンナに恋をするというストーリーに当てはめたというブーケ。バラ、プロテア、ラナンキュラス、ホワイトエンジェルなど柔らかな表情の花に、ドライにしたフェノコマを入れて、愛らしさの中に覗く無骨さが心をくすぐる仕上がりに。
音空花店(オトソラハナテン) 東京都世田谷区経堂5-29-1 TEL./03-6413-5587 営業時間/営業時間/10:00〜19:00(月水金土日)、13:30〜19:00(火) 定休日/木曜日 https://otosora-hanaten.com
終日フラワー 一杯のドリンクとともに。毎日を綴る花のある暮らしを提案。

客が来るたびに違う世界を見せたいという理由から、店頭に立つ時は毎回ディスプレイを変えているとか。
店内に一歩足を踏み入れると、ふわっと包みこむコーヒーの香りと、色とりどりの花々がお出迎え。「終日one」の一角にお店を構える「終日フラワー」は、2017年に2月にオープンしてから早くもファッション業界の人たちに口コミで広がり、わざわざ遠くから足を運ぶ人も多い。
「終日フラワー」のスペースには、思わず目移りするほど絶妙な発色の品種が所狭しと飾られている。「花の存在に心が癒される時もあれば、力強いパワーを貰える時もある。一つ一つの花の素材を調理して、さまざまな姿に変わる美しさを楽しんでもらいたい」と話すフローリストのちゃあさんの言葉からは、豊かな感受性と個々のオーダーに丁寧に応える姿勢が垣間見える。お店では不定期にスワッグやハーバリウムのワークショップも開催している(SNSで随時告知)。
夜にはお店の奥にあるバーもオープンし、クラフトビールを提供している。一杯楽しんだ後、ふらっと花を購入する男性もいるのだとか。時間を忘れてゆっくりしたい時、ドリンクとともに花の楽園を堪能しては?

「終日one」の外観。一輪はもちろんミニサイズのブーケを販売している時もある。
チャーミングな毒っ気が潜む花畑。

繊細で自然を愛する女性をイメージしたというブーケは、グリーンや主張が控えめな花をベースに制作。その中に独特の色合いのチューリップやラナンキュラスを入れ混ぜ、愛らしさの中に微かな毒っ気を潜ませている。花畑からそのまま摘んできたような気負わないナチュラルさが心地いい。
終日フラワー(シュウジツフラワー) 東京都渋谷区上原3-44-11 Tel./090-2488-6212 営業時間/10:00〜21:00(火水木金土) ※作業状況により時間の変動があります。お気軽にお店にお問い合わせください。 定休日/日曜日、月曜日 https://www.instagram.com/charbatake
COCHON 隠れ家的アトリエで出会う花の繊細さとダイナミズム。

友人のカメラマンと共同で作った写真を壁一面に。その他壁に掛けられている作品はほとんどが手作り。
国道246号の裏通りのビルの階段をあがっていくと、そこに広がるのは森の中に迷いこんだようなアトリエ。仄暗い空間で生き生きとした色彩を放つ花のスペースは、まるでインスタレーションのようだ。フローリストの和田格さんと小畑麻美さんによる「cochon」は2016年4月にオープン。店名の意味は、フランス語でブタ。ピエル・パオロ・パゾリーニ監督の映画『豚小屋』(1969)に出てくるセリフの響きが気に入り、何かを始める時はこの名前にしようと決めていたそう。
オーナーの和田さんは都内のフラワーショップで5年間勤めた後、すでにあるものをかたちにするのではなく、自分の世界観を表現したく独立を決意。一本一本を生き物のように扱うアレンジメントは、毎回変化する世界観で楽しませてくれる。「cochon」のブーケは強い生命力に溢れ、一見マッチしていない組み合わせであっても不思議と品良くまとまりがある。
日頃はお祝いのブーケや自宅用として購入する人が多いとか。ここに信頼を寄せれば、贈る人も贈られる人にとっても思い出に残る日に彩ってくれるはず。

他では珍しい根花つきの状態の花を常設している。最近ではアガベなど鉢植えの販売もスタート。
家までの帰り道も楽しい金魚鉢風ラッピング。

ヒヤシンス、ミモザ、フリチラリア、など生き生きとした組み合わせの色合いに仕上げられたブーケは、親が子どもの誕生日に贈るのをイメージして制作。金魚鉢のようなフォルムのラッピングは、花を購入して持って帰るまでのプロセスも楽しんでほしいという和田さんの思いから、この形に辿りついたのだそう。
COCHON(コション) 東京都渋谷区渋谷2-8-10 ビルグーテ青山 4F Tel./080-4921-6889 営業時間/13:00〜19:00(月水金)、12:00〜19:00(木土日) 定休日/火曜日 https://cochon.amebaownd.com
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