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18-19年秋冬コレクション:勢いづくモードの波

  • 執筆者の写真: yuishihara
    yuishihara
  • 2018年5月15日
  • 読了時間: 4分

欧米から日本まで続いた18~19年秋冬コレクションの会期中、様々な場面でモードの波を実感した。象徴的だったのは、90年代に服好きをとりこにしたマルタン・マルジェラの回顧展。東京コレクションに来場する若者が急におしゃれを楽しみ出したのも今のムードを反映している。ブランド側はその勢いに応えるように、その魅力やストーリーをしっかりと伝えるためにプレゼンテーションに対するこだわりを深めた。トピックスを紹介する。



時代に呼応するマルジェラ展


パリ・コレクションの最中、プレスもバイヤーもこぞって向かったのがマルジェラ展だ。コレクション期間にトップメゾンが歴史を伝える展覧会を行うのは恒例だが、今回のマルジェラ展の意味は少し違う。タイミングが絶妙だった。

マルジェラ自身がブランドを手掛けたのは89年から09年。展覧会を見ると、特に90年代と現在のモードのシンクロが実感できる。今、ファッショントレンドとして注目されるボリュームやランジェリー、グラフィティー、インサイドアウト、グランジといった要素は、マルジェラのアーカイブに見られる。

ディレクションは、マルジェラ自身が行った。モードの波が寄せつつある今の気分を感じ取り、自分の作品を振り返るなら今しかないと思ったに違いない。そんな風に勘ぐってしまうほど、時代に共通点を感じる。

ストリートでもマルジェラの存在感が高まっている。代表例は、タビシューズの復活。おしゃれ好きが永遠の定番として履き続けてきたアイテムだが、ここ数年でコレクション会場はもちろん、若者からママまで幅広い層が履くようになった。類似品が出るほどの人気ぶり。マルジェラを知らない若い層が、ノスタルジーではなく初めて見るカッコいいものとしてタビシューズを購入している。

そんな状況を知ってか知らずか、今回の東京コレクションで、若いデザイナーがマルジェラっぽいヘアメイクをモデルに施した。モデルの目を隠す厚ぼったい前髪。それは、マルジェラが00年に発表した匿名性を感じさせるデザインだ。オマージュなのか、コピーなのかはさておき、こんな細部からもモードの機運が感じられる。



モード化する日本の若者


東京コレクションに集まる若者が、一気におしゃれになったのもトピックスの一つ。コレクショントレンドそのものは、定番や継続アイテムが増えていて新しさに欠ける部分もあるが、会場に集まる若者たちはファッションを全力で楽しんでいる。

彼らが着ているのは、東京コレクションに参加している若手デザイナーの服。実力のある若手が増えていることと、若い消費者のモード化は比例しているようだ。SNSでの発信と拡散がこの流れを後押ししている。

あるファッション専門学校生による、東京コレクション中の試みも今っぽい。自身の卒業制作をインスタグラマーに着せ、コレクション会場を行き来させた。優秀な学生で作品も魅力的。それをファッションスナップを通して拡散しようとした。実際、ファッションショーのように、多くの人の目に留まった。



ショーはアイデア勝負に


ショー会場や演出にこだわるブランドが目立った。次から次へと新しいデザインを見せるよりも、継続デザインを進化させる傾向が強まるなか、観客を引きつけるために演出に重きが置かれるようになった。練りに練ったプレゼンテーションには驚きと楽しさがあり、記憶にきっちり残る。そんなショーがいくつかあった。

象徴的だったのはミラノの初日に行われた「モンクレール・ジーニアス」。8人の有力デザイナーによる八つのコレクションはストリートからドレスまで幅広く、徹底的な戦略で広く発信しようとするブランドの意気込みを感じさせた。

「プラダ」のインパクトも強かった。会場の外に巨大なネオンサインを建てて来場者の気持ちをショーに誘い、キーとなるネオンカラーを印象付けた。ショーそのものは10分少々だが、前後も含めたプレゼンテーションと言える。もう一つ、パリの「コシェ」は、劇場の座席前の細い通路をモデルたちにくまなく歩かせることで、全ての人に対してフラットな立場を貫くブランドの哲学を表明した。

リステアの柴田麻衣子クリエイティブディレクターは、「新世代にヘリテージはなかなか伝わらない。びっくりして初めて財布のひもを緩める。アイデア勝負になっているのを感じる」と語った。

 
 
 

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